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イブラヒムの物語

イラク、シェハン

 

イブラヒムは、職場である携帯電話ショップに来たお客さんに元気よく挨拶をします。彼は最近、修理の講習を受講し終わりました。そこで学んだ技術や機器の使い方を活かせることにワクワクしています。しかし、この気持ちの裏には悲しみがありました。

 

「私は2001年生まれで、年齢は若いですが、家族と一緒に経験したことのために、心は年老いてしましました。」と彼は言います。

 

イブラヒムと家族はモスル出身のクルド人です。8人兄弟の彼の家族はイラク北部で幸せな生活をおくっていました。家や仕事に恵まれ、学校にも通っていました。しかし彼の家族は宗派闘争に巻き込まれてしまったのです。兄弟たちは民兵から拷問を受けました。「もし自分と同じものを見たら、モスルには行きたくなくなるよ」と彼は言います。

 

兄が家族の避難を強く勧めたのは、イブラヒムが13歳の時でした。服だけが入ったリュックを持って、彼らはモスルからクルド人自治区のシェハンに移りました。それは、2014年の夏、ISISがモスルに侵攻する1週間前でした。

 

イブラヒムは避難の時のことをはっきり覚えてません。家を捨て、シェハンの道端で寝ている漠然とした記憶しかありません。ショックのせいで辛かった当時のほとんどの記憶を忘れたのだと彼は考えています。

 

「ここシェイハンに着いた時は、道端で暮らしていました。持ち物は何もありませんでした。」しかし少なくとも、彼らは安全でした。

 

イブラヒムは学校に戻りませんでした。学校は家族にとっては贅沢でした。その代わり、家族を支えるために働き始めました。兄が路上の片隅で始めたスマートフォンのアクセサリー販売をイブラヒムは手伝いました。そして2年前、店を開きました。

 

「子どもの頃から、携帯電話がどう動くのか考えるのが好きでしたが、勉強する機会や講習を受けるお金はありませんでした。」彼は言います。今年、イブラヒムはUNIDOのトレーニングを受ける機会を得ました。

 

1ヶ月間のトレーニングで参加者は、携帯電話修理や基礎的なプログラミングを学びます。

 

ノートに書いたスケッチを指差しながら、イブラヒムは誇らしげに学んだことを説明します。そして、携帯の背面を開けて実際にどう修理するのか見せてくれました。スクリーンの傷やひび割れは、お客さんが抱える主な問題の一つです。それだけでなく、マイクや充電器の故障、設定のアップデート、データの移行にも対応することができます。

 

トレーニングの修了後、工具、回路計、DC電源等の入った修理キットをUNIDOより提供されました。それらを兄の店で使い、UNIDOのTシャツを誇らしげに着て、彼は働きはじめました。

 

「コースを受けられてとても幸せです。ずっと学びたかったことを学べました。」

 

UNIDOのトレーニングコースでは、学校を中退したために学べなかった体系的なスキルと知識を身につけました。これにより、イブラヒムのキャリアの道筋は明確になりました。携帯電話についてより深く学び、コンピューターについての知識も増やし、いつか自分自身の店を持ちたいと考えています。

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