シリア難民キャンプで菓子作りを支援
イラク、ダラシャクラン・キャンプ
「シリアのお菓子は有名なんだ。」
シリア難民であるモハメド・サイードは、娘婿のイマード・マハムードとともに、イラク北部エルビル市近郊のダラシャクラン・キャンプで手作りのケーキやバクラヴァ(刻んだナッツを詰め蜂蜜で甘く味付けた菓子)を販売し、生計を立てています。
サイードとマフムードは、ダラシャクランキャンプ内にある菓子店のひとつ「シマズ・スイーツ」を経営しています。シマズ・スイーツは現在、毎日10~15キログラムをキャンプの住民に売っていますが、サイードとマフムードは、エルビル市で販売したいと考えています。人口が85万人以上の大都市で、すでに成功しているシリア人経営の菓子店がいくつもあるからです。
UNIDOがオーストリアと日本政府から資金援助を受けて実施したプロジェクトのおかげで、彼らのビジネス拡大の夢は一歩近づきました。
ダラシャクラン・キャンプには、2013年10月以来、シリア北東部のカミシュリからの難民を中心に1万1000人近いシリア人が暮らしています。
シリアが戦後8年目を迎えた現在(記事執筆当時)、ダラシャクラン・キャンプは長期化の様相を見せています。国連が提供するテントに代わり、コンクリートの家が建ち、住民は生計をたてる方法を探し始めています。キャンプ内には、ウェディングドレスやランジェリー、テイクアウトの食事やアイスクリームなど、住民によって起業された店が400軒以上もあります。
キャンプ・マネージャーのアシュナ・ガルディ氏は言います。
「難民たちは仕事を求めています。国際ドナーからの支援がが少なくなっている今、キャンプ住民自身が生計をたてることは、ますます重要になってきています。」
UNIDOは、イラクのクルド自治区に暮らす難民の生計トレーニングを実施しています。ダラシャクラン・キャンプでは、農家、在宅製造、中小企業までの食品生産に携わる人々に対して、衛生、安全、マーケティングのトレーニングを提供しています。
サイードとマフムードの店、「シマズ・スイーツ」がビジネスを拡大するために、トレーニングは役立ちました。「研修で、ビジネススキルや食品を扱う際の衛生・安全基準の重要性を学びました」とマフムードは言います。
また、パッケージングを改善し、キャンプから車で45分のエルビルまで配達するというビジネスプランも実現しました。
サイードとマフムードのビジネス拡大には、起業家としてのスキルやノウハウに加えて、基本的な製造も重要です。UNIDOは、彼らの店「シマズ・スイーツ」を含むキャンプ内の菓子店の改修工事を支援しました。ビジネスを未来に向けて、成長・持続するためのインフラと機材を提供しました。